結論
ロボットの保守は「壊れてから直す」ものではなく、導入前に次の5つを決めておくものです。
- 日常点検: 始業前・運用中・終業後・月1回に、誰が何を見るか
- バッテリー: 稼働時間(メーカー公表で、機種によって約1時間から5時間超まで差があります)に対して、予備を何本持つか
- ファームウェア更新: セキュリティ対策でもあるので、確かめてから全機に広げる手順
- 故障時の流れ: 連絡先、記録、データの控え、保証の条件
- 人の育成: 担当者が替わっても運用が続く体制
保証の条件を知らずに分解したり非純正品を使ったりすると、無償で直せた故障が有償になることがあります。
日常点検
メーカーの取扱説明書の点検項目を優先し、次の表で補います。
| タイミング | 見ること |
|---|---|
| 始業前 | 外観(割れ・変形・ねじの緩み)、足裏や車輪の摩耗と異物、バッテリーの残量と外観(膨らみ・傷)、カメラ・LiDAR(周囲を測るレーザーのセンサー)の汚れ、非常停止が効くか、動かす範囲に人や障害物がないか |
| 運用中 | 異音・振動・発熱、つまずきや転倒の回数、人が介入した回数 |
| 終業後 | 充電、清掃、保管場所の施錠、作業ログの保存 |
| 月1回 | ファームウェアの更新の有無、保守・保証の状況、点検記録の見直し |
バッテリーの運用
機種別の稼働時間と交換の方式
メーカー公表の値です。「—」は、当サイトの図鑑で交換の方式を確認できていないもので、販売会社に確認してください。
| 機種 | 稼働時間の目安 | 交換の方式 |
|---|---|---|
| Unitree R1 | 約1時間 | — |
| Unitree G1・G1+ | 約2時間 | — |
| Unitree H2 | 約3時間 | — |
| Unitree H2 Plus | 約3時間 | クイックリリース式(すばやく着脱できる方式) |
| Unitree H1/H1-2 | 公表なし(容量864Wh) | 交換式 |
| Unitree H2-D | 直接給電で連続稼働。自走型(Flagship)はバッテリーで約5時間 | 交換式/自動充電(Flagship) |
| Unitree Go2 | AIR・PRO・X 約1〜2時間/EDU 約2〜4時間 | — |
| Unitree B2 | 4〜6時間 | — |
| Unitree A2 | 無負荷で5時間超 | —(バッテリー1本と2本の構成あり) |
| Booster K1 | 約1時間10分(Edu・Pro、秒速1.1mで歩いた場合) | — |
| UBTECH Walker S2 | 公表なし | バッテリーを自分で約3分で交換できる |
運用のポイント
- 公表値は条件つきです。 歩く量、持つ物の重さ、気温で短くなります。PoC(試験導入)で、自社の作業での実際の稼働時間を測ります。
- 予備の本数を計算しておきます。 1日に動かしたい時間を、1本で実際に動ける時間で割ると、必要な本数と交代の回数の目安になります。Go2 で長時間巡回するなら、EDU(15,000mAh)か予備バッテリーの運用が要ります。
- 純正品を使います。 Unitree の規約は、非純正のバッテリー・アクセサリーによる不具合を無償保証の対象外にしています。Booster K1 は、販売店のスイッチサイエンスが日本の電気用品安全法に準拠した AC アダプターとバッテリーを同梱すると説明しています。
- 傷んだバッテリーは使いません。 膨らみ・傷・発熱があるものは使用をやめ、扱いを販売会社に相談します。Unitree は、重度に損傷したバッテリーは返送しない(返送されても廃棄され、返却されない)としています。
- 充電の場所を決めます。 高温や直射日光を避け、燃えやすい物から離して充電します。
ファームウェアの更新
ファームウェア(機体を動かす基本ソフト)の更新は、セキュリティ対策でもあります。2026年には Go2 のバージョン1.1.7〜1.1.11 に関わる脆弱性が公表され、G1 EDU では研究者が修正版 1.5.5.0 の公開を記しています(研究者自身は修正を未検証)。機体のバージョンを記録していないと、影響を受けるかも判断できません。更新は次の順で進めます。
- 現在のバージョンと、設定・自社のプログラム・地図などの控えを取る
- 更新で何が直るのかを、販売会社に確認する
- まず1台で更新し、業務で使う動きが変わらないかを確かめる
- 問題がなければ、残りの機体を更新する
- 機体ごとに、バージョンと更新日を記録する
導入時に最新版にし、その後は月1回、更新の有無を点検します。更新の受け取り方(ネットワーク経由か、販売会社の作業か)は、ロボット専用ネットワークの設計と合わせて決めます(セキュリティ・ガバナンスガイド)。
消耗部品と交換部品
使ううちに摩耗・劣化しやすいのは、足裏や車輪など地面に触れる部分、バッテリー、ハンドやグリッパー(物をつかむ先端)、ケーブルとコネクター、センサーの保護カバーなどです。見積もりの段階で、次の3点を販売会社に確認します。
- どの部品が消耗品の扱いで、保証の対象外か
- 部品の在庫と、取り寄せにかかる期間
- 自社で交換してよい部品はどれか
Unitree の規約は、正規の指示のない自己修理・部品交換を無償保証の対象外にしています。自社で交換してよい範囲は、事前に書面で確かめておきます。
故障したときの流れ
- 止めて離れる: 非常停止をかけ、周りの人を下がらせる。バッテリーが発熱・発煙・膨張しているときは近づかない。
- 記録する: 発生時刻、していた作業、ファームウェアのバージョン、ログ、写真・動画。
- 販売会社に連絡する: 国内の正規代理店・販売会社から買った場合は、その窓口が修理と部品の手配を担います。
- データの控えを取る: Unitree は、修理でデータが消える可能性があるとして、事前のバックアップを求めています。
- 送付・修理: Unitree の規約では、送るときの送料はまず利用者が負担し、製品自体の品質不良であれば検査・部品・作業・速達の費用を Unitree が負担します。国内の販売会社を通した場合の条件は、販売会社との契約で確認します。
- 代わりの手段を動かす: 修理の間は人の作業に戻す。止められない業務なら予備機も検討し、原因と対策は点検表に反映します。
保証の条件
Unitree の規約(2026年10月22日確認)の主な点です。
- 保証は、製品を受け取った日から始まる
- Unitree の許可なく改造・分解・筐体を開けると、保証は無効になる
- 保証期間外は有償で支援する
- 無償保証の対象外は25項目あり、期限切れ、落下・圧迫・水没などの不適切な使用、非純正のアクセサリー・バッテリー、正規の指示のない自己修理・部品交換、過負荷、他社製品との併用による不具合、開発者モードで利用者が作ったプログラムによる損傷などを含む
保証期間は機種とモデルで違います。G1 は標準モデル8か月・EDU 版18か月、H2 は標準モデル8か月・EDU 版12か月、H2 Plus は12か月です。他社では、Booster K1 は Geek が3か月、Edu・Pro が1年。UBTECH Walker S2 は、国内代理店の GA Robotics が365日日本全国のオンサイト対応を案内しています。送って直すのか、技術者が来て直すのかで止まる期間が変わるので、比べるときの軸にします。
運用担当者の育成
| 役割 | 主な仕事 |
|---|---|
| 運用担当(現場) | 起動・停止・充電、始業前の点検、異常時の停止と連絡。試験導入では1〜2名が多い |
| 技術担当 | 動きの調整、自社のプログラム、ファームウェア更新の確認。二次開発(自社でプログラムを書くこと)をする場合に要る |
| 管理責任者 | 点検記録・ログ・ネットワーク・保守契約の管理、販売会社との窓口 |
育成は、販売会社の操作説明を運用担当と技術担当が一緒に受ける、非常停止と異常時の手順を実機で練習する、ロボットとの距離と立ち入る範囲を現場の全員に伝える、点検と手順を手順書にして担当者が替わっても続くようにする、の順で進めます。
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