結論

  • 人型・四足歩行に特化して発行された国際規格は、当サイトが確認した範囲ではまだありません。 既存の3系統の規格の考え方を借りて、自社の使い方に合わせたリスクアセスメント(危険の洗い出しと評価)を行うのが現実的です。
  • 工場・倉庫で産業用の作業をさせるなら ISO 10218、受付・案内など人の生活の場を動くなら ISO 13482、人と同じ空間で一緒に作業するなら ISO/TS 15066 の考え方が参考になります。
  • 国内の法令では、労働安全衛生規則の「産業用ロボット」に当たるかが最初の確認点です。販売会社と所轄の労働基準監督署に確認します。
  • 保険は、賠償(施設賠償・PL)と本体の損害(動産)の両方を、用途を伝えて確認します。

主な国際規格

規格対象押さえる点
ISO 10218-1:2025産業用ロボット本体(作る側の設計)2025年版で、サイバーセキュリティの要求、ロボットの Class I/Class II の分類、協働運転の要求(旧 ISO/TS 15066 の内容)を取り込んだ。2011年版・2006年版は廃止
ISO 10218-2:2025産業用ロボットのシステム(使う側)統合・試運転・運転・保守の場面で作業者を守るための要求
ISO/TS 15066:2016協働産業用ロボット協働するロボットシステムと作業環境の安全要求。ISO 10218 を補う。非産業用ロボットには適用しないが、原則は参考になる。2022年に見直され「改訂予定」
ISO 13482:2014パーソナルケアロボット移動して人の手伝いをするもの(mobile servant)、身体の動きを支えるもの(physical assistant)、人を乗せて運ぶもの(person carrier)の3種。人との物理的な接触を含む用途が対象で、玩具・医療ロボットは対象外

ISO 10218-1 は、機械安全の基本規格 ISO 12100 の下にある「タイプC規格」(特定の種類の機械に向けた個別の規格)です。ISO 13482 は、対象をサービスロボット全般に広げる改訂版(ISO/FDIS 13482)が進行中で、発行の時期は確認できていません。応用の手引きとして ISO/TR 23482-2:2019 があります。

ヒューマノイド・四足歩行への当てはめ方

どの規格の考え方が近いかは、機種ではなく使い方で決まります。

使い方参考にする規格該当しうる機種の例
工場・倉庫で、部品や箱を扱うISO 10218-1/-2Unitree H2-D(公式は産業自動化を用途に挙げる)、UBTECH Walker S2(製造・物流向け)、Agility Digit 5(物流施設での協働作業を想定して発表)
人と同じ作業台・通路で一緒に作業するISO 10218-1:2025 の協働運転の要求、ISO/TS 15066 の原則カワダロボティクス NEXTAGE
受付・案内・施設の巡回など、人の生活の場を動くISO 13482 の「移動して人の手伝いをするロボット」の考え方UBTECH Walker C1(受付・案内向け)、展示や巡回に使う小型機

機種がどの規格への適合をうたい、どの使い方を前提にしているかを、販売会社に確認してから当てはめます。

人型・四足歩行で特に見ておく危険は次のとおりです。

  • 重さ: メーカー公表で G1 は35kg、H2 は約70kg、四足歩行の B2 は約60kg、H2-D は約120〜148kg(構成による)です。
  • 転倒: 脚で立つロボットは、電源や制御が止まると倒れるおそれがあります。
  • 腕と移動: 挟まれ、持っている物の落下、通路での人との接触。
  • 乗っ取り: 機体が乗っ取られると、物理的な危険にもつながります。対策はセキュリティ・ガバナンスガイドにまとめています。

国内の法令で確認すること

労働安全衛生規則(産業用ロボット)

労働安全衛生規則の第150条の4は、産業用ロボットに触れて危険が生じるおそれがあるとき、柵や囲いを設けるよう事業者に求めています。厚生労働省は、対象を定格出力80W超の産業用ロボットと説明し、リスクアセスメントで危険のおそれがなくなったと評価できれば、人との協働作業ができるとしています。

たとえばカワダロボティクスは NEXTAGE について、80W以下の低出力モーターで構成されているため、適切なリスクアセスメントを行えば安全柵なしで人と協働できると説明しています。ヒューマノイドがこの「産業用ロボット」に当たるかは機種と使い方で変わるので、販売会社と所轄の労働基準監督署に確認してください。

電波法(技適)

Wi-Fi・Bluetooth を使う機器は、技適マーク(電波法の基準に合っていることを示す印)が付いていれば免許なしで使えます。付いていない機器を使うと電波法違反になる場合があります。機種ごとの登録状況は国内購入・サポート体制ガイドで説明しています。

施設内・公道・空港などの運用ルール

商業施設・駅・空港・他社の工場など、自社以外の場所で動かすときは、施設の管理者が決めた安全規程と立ち入りのルールが先に立ちます。動かす範囲、時間帯、人との距離、緊急時の連絡先を、施設の管理者と事前に取り決めます。公道で動かす場合は、施設の中とは別の法令がかかる可能性があるため、所轄の行政機関への事前の確認が要ります。

保険の種類

保険何に備えるか確認すること
施設賠償責任保険自社の施設や業務の中で、来訪者などにけがや損害を与えたときロボットの運用が対象に含まれるか。展示会など社外で動かす場合も含まれるか
生産物賠償責任保険(PL保険)製品や引き渡した仕事の欠陥で、他人にけがや損害を与えたときメーカー・販売会社が加入しているか。自社がロボットを使ったサービスを提供する場合に要るか
動産総合保険ロボット本体の破損・盗難など、自社の財産の損害落下・水濡れ・輸送中の事故が対象か

本体の損害はメーカー保証で直せるとは限りません。たとえば Unitree の規約は、落下・圧迫・水没などの不適切な使用による故障を無償保証の対象外にしています。ロボットの運用を保険の対象に明示するかは保険会社と契約内容によるので、用途と運用範囲を保険代理店に伝えて確認してください。

事故に備えて契約で決めておくこと

  • メーカー・販売会社・システムを組む会社・自社の、それぞれの役割(設計、設置と設定、プログラム、運用と教育)
  • 事故やヒヤリハット(事故には至らなかった危ない場面)が起きたときの連絡と、ログの保存
  • 自社で作ったプログラムの扱い。Unitree の規約は、開発者モードで利用者が作ったプログラムによる損傷を無償保証の対象外にしています

リスクアセスメントの手順

  1. 使い方と範囲を決める: 場所、時間帯、近くにいる人(作業者・来訪者)、速度と持つ物の上限。
  2. 危険源を洗い出す: 転倒、衝突、挟まれ、物の落下、バッテリーの損傷・発熱、誤作動や乗っ取り。
  3. リスクを見積もる: けがの重さと起こりやすさを、機体の重さ・速さ・人との距離・頻度から評価する。
  4. 減らす手立てを決める: 設定や作業の設計で減らす、区画・非常停止などで守る、表示と教育で伝える、の順に考える。
  5. 残ったリスクを記録し、現場に伝える: 誰が、何に気をつけるかを手順書にする。
  6. 運用しながら見直す: PoC(試験導入)や運用で、介入やヒヤリハットを記録して手立てを更新する。

出発点は、メーカーの取扱説明書にある安全上の情報です。PoC の設計に組み込む方法はレンタル・リース・PoC の進め方で説明しています。

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