結論
AIロボットは「人の近くで動く機械」であると同時に「ネットワークにつながるコンピューター」です。2025年から2026年にかけて複数の脆弱性が報告されており、法人で使うには対策が前提になります。当サイトの立場は「対策すれば法人利用できる」です。断定や煽りではなく、事実・出典・メーカーの修正状況を併記して整理します。

報告されている問題(2026年10月21日時点)
研究者の公表ページ、JVN iPedia、メーカーの発表を確認した結果です。確認できなかった点はそのまま書いています。
- UniPwn(Bluetooth 経由の Wi-Fi 設定機能): 2025年9月20日に研究者(Andreas Makris 氏・Kevin Finisterre 氏)が公表しました。Bluetooth で Wi-Fi を設定する機能に、暗号鍵が全機体で同じ・認証が固定の文字列の照合だけ・SSID とパスワードが検証なしにコマンドとして実行される、という3つの不備が重なり、Bluetooth の届く範囲から管理者権限(root)で機体を乗っ取れるとしています。影響機種は Go2・G1・H1・B2 の各シリーズ(公表時点の最新ファームウェアまで)。CVE-2025-60250 ほか。感染した機体が範囲内の別の機体へ自動で広がりうる(ワーム化)とも指摘しています。
- UniPwn へのメーカーの対応: Unitree は2025年9月29日に X で「報告された問題の大半は修正済みで、更新を順次配信する」と表明したと報じられています。機種ごとの修正版の番号を示す公式アドバイザリは、当サイトでは確認できていません。2026年8月の別の研究者の報告では、G1 の鍵は機体ごとに固有に変わっており、鍵を配る仕組みの変更が UniPwn への対策だったと Unitree が説明したと記されています。
- JVNDB-2026-007244(Go2 と Android アプリ): Go2 のファームウェア 1.1.7〜1.1.11 と Android アプリの組み合わせで、アプリが端末内に保存したプログラムを書き換えると、本体が検証せずに管理者権限で実行してしまう問題です(CVE-2026-27510、CVSS 8.8)。前提は、攻撃者が操作用の Android 端末に触れられること、またはコミュニティで共有された悪意あるプログラムを取り込むことです。2026年2月26日公表。JVN の掲載(2026年3月16日更新)に修正版の記載はありません。
- G1 EDU の遠隔コード実行(CVE-2026-76639・CVE-2026-76640): 2026年8月27日に研究者(Olivier Laflamme 氏)が公表しました。1つは、本体内部のネットワーク(有線ポートや本体の Wi-Fi)から、WebRTC と DDS をつなぐブリッジと知識ファイルのアップロード機能の不備を組み合わせて管理者権限を得るもの。もう1つは、Bluetooth の届く範囲から、鍵の配布に使うクラウドの不備などを組み合わせて管理者権限を得るものです。Unitree は報告を検証して報奨金を支払い、クラウド側は2026年7〜8月に修正されました。研究者は「2026年9月1日に修正版ファームウェア 1.5.5.0 が公開され、攻撃経路を塞ぐとされる」と記していますが、修正を自身では検証していないとしています。検証機は G1 EDU で、標準モデルへの影響は明記されていません。
- 状態情報の送信: セキュリティ会社 Alias Robotics は、G1 がマイクの音声・カメラの映像・位置情報・モーターの状態・AI との会話履歴などを、利用者の同意や通知なしに中国などのサーバーへ継続的に送っていたと報告しました。この指摘に対する Unitree の反論は、当サイトでは声明の原文も、反論の内容を具体的に伝える報道も見つけられていません(2026年10月21日時点)。確認できているのは、Bluetooth 経由の脆弱性について Unitree が問題を認めて対応を始めたと表明したことまでです。送信の有無と内容について第三者の監査は確認できておらず、導入する側は「送信先の確認」(下の対策6)で自分の機体の通信を確かめるのが確実です。
SD カードからの起動を悪用した物理的な改ざんのリスクも語られていますが、一次情報で確認できていないため、ここでは事実として扱っていません。
導入時の対策
- ネットワークの分離。 ロボット専用の無線と VLAN(仮想的に分けたネットワーク)を用意し、社内の業務システムとつながないようにします。本体の有線ポートや本体が出す Wi-Fi(内部ネットワーク)に触れられる人も限定します。G1 では内部の通信(DDS)に認証と暗号化が有効になっていないと研究者が報告しています。
- ファームウェアの管理。 導入時に最新版へ更新し、更新の案内を受け取る窓口を決め、月1回点検します。
- 使わない機能の停止。 Bluetooth の設定機能、クラウド連携、遠隔操作アプリなど、運用に要らない機能は止めます。
- 鍵と認証情報の管理。 初期パスワードを変え、アクセスできる人を限定し、記録を残します。操作用のスマートフォン・タブレットも管理対象にし、コミュニティで共有されたプログラムは取り込みません。
- 物理的な保護。 SD カードや端子に触れられないよう、保管場所と鍵を決めます。
- 送信先の確認。 ロボットがどこへ何を送っているかを、ネットワークのログで確認します。
- ペネトレーションテスト。 本導入の前に、専門家による侵入テストを検討します。
- 契約条項。 脆弱性が見つかったときの通知義務、修正版の提供、インシデント時の対応を、販売会社との契約に入れます。
導入前チェックリスト
- ロボット専用のネットワークを用意した
- ファームウェアを最新版にし、更新の受け取り方を決めた
- 使わない無線・クラウド・遠隔機能を止めた
- 初期パスワードを変え、アクセスできる人を限定した
- 操作用の端末を管理し、出どころの分からないプログラムを入れない決まりにした
- 保管場所と物理的な鍵を決めた
- 通信の送信先をログで確認した
- 契約に通知義務と修正版の提供を入れた
- 運用担当者に、異常時の停止と連絡の手順を教えた


