結論
国の開発支援事業(GENIAC)の枠組みで、通信大手とコンビニ大手が店舗でロボット基盤モデルを試す事例です。個別の作業を一つずつプログラムするのではなく、「学習させれば応用が利く」モデルを現場で鍛える、という方向性を示しています。KDDI は2026年9月9日、「小売物流業等の現場業務を代替するロボット基盤モデルの研究開発」が経済産業省と NEDO の GENIAC に採択されたと発表しました。実証から得た技術とユースケースをもとに、2028年度以降にロボット基盤モデルを技術公開する計画です。
背景:小売・物流の人手不足
KDDI の発表文は、2035年には卸売・小売業で77万人、運輸・郵便業(物流)で23万人、計100万人規模の労働力不足が予測されている(パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計 2035」)と背景を説明しています。商品や環境が刻一刻と変わるコンビニの作業は、ロボットによる自動化の難易度が極めて高い領域です。
事業の内容(KDDI の発表文より)
- 場所: 東京・高輪の KDDI 本社の従業員専用店舗「ローソン S KDDI高輪本社店」(2025年7月に KDDI とローソンが始めた実験店舗)を中心に実施
- データ: 店舗スタッフが軽量な AI グラスを着けて通常業務を行い、「どの商品を見て、どのように手を伸ばし、掴んでいるか」という作業者目線のデータ(エゴセントリックデータ)とロボット視点の映像を収集。実世界データを教師データにして、デジタルツイン上でシミュレーションデータも自動生成する
- モデル: グローバルで先行するオープンなロボット基盤モデルをベースに学習させ、多指ハンドをしなやかに制御する小売・物流特化型のモデルを開発。袋菓子のように柔らかいもの、形が複雑なもののピッキングや、隣の商品を倒さずに棚に補充する作業を目指す
- ハードウェア: 特定のハードウェアに縛られず、国内外のロボットメーカーの多様なロボットに搭載して実証し、知見をメーカーに還元する
体制
| 役割 | 企業 |
|---|---|
| 全体統括、通信・計算基盤・セキュリティ基盤、基盤モデルの開発、現場データの収集と実証 | KDDI |
| 基盤モデルの開発技術 | ELYZA(KDDI グループ) |
| 画像認識・状況理解、ロボット軌道生成などのデータ拡張技術 | KDDI総合研究所 |
| 実証環境と店舗運営の知見 | ローソン |
| ヒューマノイドロボットの提供(協力企業) | Genki Robotics |
| ロボット基盤モデル(ベースモデル)の提供(協力企業) | リアルワールド株式会社(RLWRLD) |
導入検討企業への示唆
- 基盤モデルの進み方を見ておく。 作業ごとの作り込みが減れば、導入コストの構造が変わります。技術公開は2028年度以降の計画なので、今は方向性の確認です。
- データを取れる現場は強い。 実証に協力する店舗・倉庫は、自社に合ったモデルを早く手にできます。
- 今すぐの導入は「定型作業から」。 基盤モデルの成熟を待つ間も、搬送・巡回など定型の作業は現行機で始められます。


