結論
倉庫作業の中で最も人手がかかるピッキングに、ヒューマノイドを試験的に入れた事例です。山善は2025年10月30日、INSOL-HIGH と、センコーグループの東京納品代行と共同で記者説明会を開き、東京納品代行の物流センター(千葉県市川市)での試験導入とデモを報道陣に公開しました(MONOist、LNEWS)。使った機体は中国 AgiBot 製のヒューマノイドで、山善は「日本企業として初めて導入した」と説明しています。
これに先立つ10月1日、山善は INSOL-HIGH が主催する「フィジカルデータ生成センター」構築プロジェクトへの参画を発表しています(一次情報)。海外メーカーのヒューマノイドを最大50台動かす施設を2026年春頃に構築し、2026年以降に全国の生産・物流現場への本格導入を目指す計画です。
背景:ピッキングの人手不足
EC の拡大で出荷件数が増える一方、繁忙期の人員確保は年々難しくなっています。自動倉庫に全面改修するほどの投資は難しく、既存のラックと通路を活かしたまま省人化したい、という施設が多いのが現状です。
実証の場となった東京納品代行の東京ベイ・ファッションアリーナには、すでに AutoStore(自動倉庫)が入っています。それでも、運ばれてきたコンテナから商品を取り出して梱包・仕分けする最終工程は人が担っており、東京納品代行はこの「最後の工程」をヒューマノイドが担えることに期待していると報じられています。
試験導入の内容(報道より)
- 公開日・場所: 2025年10月30日、東京納品代行の東京ベイ・ファッションアリーナ(千葉県市川市。2013年10月開設、アパレル・百貨店の商品を扱う物流センター)
- 作業: 自動倉庫から搬送されたケースの中のぬいぐるみを認識して掴み、別の折りたたみコンテナ(オリコン)に移す「ピックアンドドロップ」。頭部・右手・左手の計3基のカメラで対象の形や重さを予測しながら作業する
- 機体: 中国 AgiBot 製のヒューマノイド(機種名は公表なし)。AgiBot が学習データのプラットフォームを持ち、データと機体をセットで導入できることが採用の理由。公開モデルは片腕3kg までの荷物に対応(LNEWS)
- 結果: 公開時点の成功率と、10個を移し替える平均の所要時間が報道で示されています。山善の発表文には数値の記載がないため、当サイトでは載せません。作業の速さは人に劣るため、夜間など人が作業しない時間帯に動かして現場を支援する考えとされています
- 汎用性: デモでは、学習データに含まれない商品や、報道関係者の持ち物(腕章)も認識して移し替えたと報じられています
仕組み(INSOL-HIGH の説明として報道)
VLM(視覚言語モデル)で目の前の映像から物体を認識し、LLM(大規模言語モデル)が実行すべき基本動作を選び、モーションプランニングで具体的な動作を計画して機体が実行する構成です。人が機体を操作して手本を見せる模倣学習のデータで基盤モデルを作り、現場ごとに数百回程度の追加学習(ファインチューニング)で照明・商品・置き場所に合わせる、と説明されています。
次の展開(山善の発表文と報道)
- 2026年春頃に「フィジカルデータ生成センター」を構築・稼働。最大50台のヒューマノイドが同時に動くトレーニング環境で、年内に10社の参画を目指す(山善の発表文)
- トレーニングは「基礎動作の標準化 → 産業特化型の応用 → 個社カスタマイズ」の3段階(山善の発表文)
- 2026年度内にヒューマノイドの現場への本格導入を目指す。機体のリース・レンタルと学習データのサブスクリプションを組み合わせる事業モデルも検討(報道)
導入検討企業への示唆
- 「人型でなければできない作業」を見極める。 この事例でも、自動倉庫が運んだ後の「最後の工程」に人型を当てています。定型の搬送なら AMR(自律走行の搬送ロボット)のほうが安く確実な場合があります。
- 学習データの蓄積が導入の中身になる。 機体の購入だけでなく、自社の現場でデータを集めて追加学習する体制まで含めて計画します。
- KPI を先に決める。 成功率・所要時間・停止回数など、試験導入の前に測る項目を決め、公表できる形で記録しておきます。


